映画感想「Fate/stay night [Heaven's Feel] II.lost butterfly」★★★★★
タイトル:「Fate/stay night [Heaven's Feel]」 II.lost butterfly
公開日:2019
監督:須藤友徳
主な出演者:川澄綾子(セイバー)、植田佳奈(遠坂凛)、神谷浩史(間桐慎二)
120分
@鑑賞日:2020.08.09
@評価:★★★★★★★★★★・・・★★★★★
劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel] II.lost butterfly」(完全生産限定版) [Blu-ray]
- 発売日: 2019/08/21
- メディア: Blu-ray
Fate/stay nightの3番目のルートHeaven's Feelの映画第二章。
前回、第一章でカチ上がったテンションを一切失望させることなくさらに越えていく傑作。
原作では掴みにくかった心理描写を巧みに映像に落とし込むことで、3つのルートの中で人気の低かった桜ルートの再評価の流れを作りつつあります。
桜研究専門家の第一人者である須藤友徳監督の手腕により桜の人気がストップ高。
BDを見ながら感想を書きまくってるので乱雑で長いです。
1.五日目(00:00:00~)
桜と士郎の2人で迎える朝食。セイバーがいなくなったのだから、もう先輩は危険なことをしないですよね?と聞く桜に「俺がセイバーに付き合ってたんじゃなくてセイバーが俺に付き合ってくれていたんだ」と答える。
サーヴァントを失ってもまだ戦いに赴こうとする士郎に桜は目を見開いてしまう。
桜の士郎に傷ついてほしくない一心がよく見える。
士郎は通学途中の公園でイリヤに出会う。イリヤ、ストレートに可愛い。
イリヤと別れたあとは遠坂に出会い、遠坂邸へ。こいつめっちゃ寄り道するな・・・まあ士郎は部活してないけど一成の手伝いとかでやたら朝早く来てるからな。
桜の夢。電車の中で、父と母、姉が乗る電車に置いて行かれ、小さな桜だけが取り残され、蟲に包まれる夢。目覚めた桜が無反応なので、おそらく幾度となく見た夢なのでしょう。
学校からの帰り道、士郎と遠坂は衛宮邸で慎二の呼出しを受け学校へトンボ帰りをする羽目に。
士郎vsライダー
夕暮れの図書館で戦う(ボコられる)士郎。このバトルシーンもむちゃ好きなんだよな~。ライダーに殴られた衝撃を活かして慎二に殴りかかる士郎。士郎は腹部に強化魔術を仕込んだ本「社会と発達心理学(エリク・H・エリクソン)」(この本のチョイスに意図はあるのかな?)でダメージを軽減していたため、魔術の使えない慎二は士郎が魔術を使ったことに多大なショックを受ける。
そして窓をブチ破ってヒロイックに登場する遠坂、完全にヒーローのそれでテンション上がるなあ~~~~~~!!!!
桜を利用したことに怒り心頭な遠坂を前に逆上する慎二。「桜、桜、桜、桜・・・・!こんな奴、どォーでもいいだろぉ!!!」のセリフ、めちゃ好きなんですよね・・どォーでもの発音の仕方好き。偽臣の書が燃える時の情けない声も好き。
ライダーが慎二から解放されたことで桜がマスターである事実が露呈。遠坂が桜に語り掛けている時、慎二はいっぺんに蚊帳の外に。慎二の視点からは、遠坂、桜、士郎の3人がものすごく遠くに見えていたってことでしょう。息を荒げる慎二の必死さが悲しい。
慎二にとって憧れである遠坂に「借り物の令呪で操っていた貴方は初めからマスターなんかじゃなかった」と直接告げられ、士郎から憐みの目で見られたことで彼の心は決壊してしまう・・・。
慎二は魔術以外の才能は全て持っていたが、それゆえに魔術に執着していた。マスターという立場になれば魔術師でなくても魔術師同士の戦いに身を置ける、自分は特別な、凡人とは異なる立場になれるという考え方が間違っていることなど初めからわかっていた。ただ借り物であってもマスターになるしか自分を保てなかったということかなあ。
慎二が作った感覚を鋭敏にする霊薬で暴走する桜。慎二は魔術回路こそ死滅しているものの、とにかく努力家で、常人をはるかに超えるスペックを持ってるんですよね。
桜の暴走とライダーの石化の魔眼で遠坂の目の前に針が現れそうに。遠坂の困惑から絶望への表情の変化が素晴らしいね・・・。そして無意識下では常に遠坂を真っ先に攻撃する桜くん。
言峰の教会で桜の治療を終えた言峰との会話。桜と遠坂が姉妹である事実が明かされる。これ、魔術は一子相伝だから桜を養子に出した、ってなってるけどなんもかんも時臣が悪いよな。間桐なんかに養子に出さずに一般社会に戻してあげるとか、姉妹そろって遠坂の家で育てりゃ良かっただろと。まあそうすると桜は士郎の家に通うこともなくなるんですけどね!
大切な人から大事なものを貰ったのはこれで2度目です。の鍵。1度目は姉から貰ったリボン。2個目は先輩から貰った家の鍵。桜の人生において輝かしい思い出の部分はここしかないのが悲しいね。
桜を探す士郎が一瞬見る幻覚。探した後、桜をどうするのかの迷いがありますね。燃える街に立つ白髪の士郎。鉄心エンドの心を殺した士郎のように思えますよね。
「イリヤの目的は切嗣と士郎を殺すことだったから。けどね、士郎が大切な人を守りたいって言うなら、私は士郎の味方だよ」イリヤの励ましを貰う士郎。イリヤはある意味切嗣の「大切な人であろうと正義のためなら切り捨てる」思想の被害者とも言える存在なのかもしれませんね。10を生かすために1を殺す、切嗣の呪いを継いだ正義の味方でなく、大切な人のために精一杯頑張る士郎なら、私は応援するよ、ということでしょうか。
"レイン"
雨の中で桜を見つけ、「帰ろう、桜。風邪、治りきってないだろ?」といつも通り声をかける士郎。風邪、の部分の発音が「かずェ」、に聞こえるのは多分ぼくだけ。
桜の独白。
桜にとって衛宮邸での生活がいかに幸せだったか、そして自分はこんな幸せを受けていていい人間じゃない、もうやめなくちゃ、離れなくちゃ、でもできなくて、周りはみんな怖いことだらけで・・・。
士郎との生活を離れるのは死のうとしてナイフを構えた時よりも怖かった。ってセリフから自殺をしようとしたことがあることも触れられていますね。
自分を肯定できない桜と、桜の分まで肯定してあげる士郎で支えあってくれ。
"月下の誓い"から士郎へと受け継がれた正義の味方でならねばならないという呪いはここで解け、士郎は桜だけの正義の味方になることを誓う。自分の望みを持たず、借り物の理想だけで動く人間のフリをしていたロボットだった士郎が、自分の願いを始めて見つけた決定的なシーン。
衛宮邸に帰ったあとの桜、唇とか表情とかがスゲー煽情的になってる。絵と声の力って凄い。桜、自分への肯定力が極端に低いから、まだこの段階では先輩を汚せないとラインを越えない。他の要因がなければ、桜はこういう自制が効くのだ。
2.六日目(00:41:40~)
いつも通りの朝を迎える桜と士郎。クソデカ卵焼きにも注目ですね。朝飯を一緒にするライダー可愛いよね。「作法が合わない」といったライダーにフォークとナイフを出す士郎もズレてるけど文句も言わずに食ってるライダーも可愛い。「そういうことじゃねえけどもういいや・・・」みたいな諦観がありそう。
桜、聖杯の泥を心臓に抱えた言峰に対し「私には勝てないもの」。表情がいいな~この見下したような、わかりきった当然の事実でしょ?みたいな顔。
士郎とライダーが出て行ったあと速攻でオナニーしまくってそのまま夕方まで時間が飛ぶ。桜の発情力凄い!
そのまま「そうだ!外に出さなければいいんだ!」と天啓を得る。セイバーを失えば安全だと思ったのにセイバー消しても外に出るんだから、外に出ないようにするのが一番いいよね、たしかにそうだね(そうか?)
バーサーカーvs黒セイバー
神バトルシーン。至上の戦い、神話の再現そういう類のもの。
ヘラクレスを見ていると泣きそうになってあかん・・・がんばれ・・・!がんばれ・・・!
何回見ても見入っちゃって書く手が止まってた。
どうでもいいけどここで臓硯の体一回崩れてから再構成してるけどこれただのパフォーマンスだよね。パフォーマンス爺。
昔は人気があるとはいえなかったヘラクレスがここまで人気キャラになったのもFGOの効果ありそう。俺はずっと推してたぞ、時代が追いついたようだな。
無限の魔力供給で最強の存在になった黒セイバーを相手にバーサーカーが果敢に戦いを挑む。
イリヤの呼びかけで何度でも蘇って戦うバーサーカーかっこよすぎるよお・・・命の火が燃えている・・・
圧倒的に不利な状況で勝てないとしか思えない状況でもその命を燃やし尽くして戦い続ける姿、世界一かっこいいぜ。真の英雄の姿だ・・・好きすぎる・・・泣くわ・・・毎回泣きそうになるわ・・・
アーチャーvsハサン
弓と双剣と格闘を巧みに扱うアーチャーの戦闘シーンは画面映えするなあ。ハサンは戦闘力低いとはさんざん言われてるが、防戦は上手いな。
ハサンを退けたアーチャーをねぎらう遠坂の真横に影が出現。影、遠坂を狙いすぎ問題あるな。
影の魔力爆発をアーチャーがロー・アイアスで防ぐ。
昔から、「士郎は黒セイバーvsライダー戦でロー・アイアスを投影してたけどどこで見たんだ?アーチャーの腕から読み取ったのか?」と言われてたが、ここで一回アーチャーが見せておくことで第三章での決戦で自然に使うことができますね。いい改変だと思います。
アーチャーは腕を落とす前、遠坂の顔を優しく撫でる。アーチャーは摩耗しきっていたために召喚された直後は遠坂のことも忘れていたようですが、だんだんと遠坂の存在を思い出したんじゃないかなあと勝手に思ってる。
原作では言峰の教会に戻ってから腕の切断を行い、言峰に腕を接合して貰っていたはずですが、劇場版ではそのあたりはカットされていますね。
ライダーが「正気ですか そんなことをすれば貴方は・・」と聞き、
「考えるまでもない。何もしなければ消えるのは2人だが、こうすれば確実に1人は助かる」とアーチャーが答えていますね。この会話の感じから、アーチャーが1人で腕の接合をしたような印象。
アーチャーの腕を接合した士郎を迎えた桜。外に出るたびボロボロになって、どうあっても戦うことをやめない彼に驚いているのかな。ただでさえ傷心の桜に、遠坂が高跳びを眺めていた思い出を士郎に話す。
何もかもを持っている姉が、桜だけの大切な思い出を取っていってしまう。自分だけの思い出が自分だけのものでなくなったことで桜は焦りに焦って布団に特攻をかけ肉体関係という手段でアドバンテージを取りにくるんすね。
風呂に浸かりながら「案外、布を取れば、元通りだったりして。」いや布取んなっていわれてたろ士郎!!!「これはダメだっ・・・!」じゃねえんだよ話ちゃんと聞いとけ!!!!!
桜は性格の成熟していない子供っぽい部分もありながら、自分の体の魅力や使い方をわかってて振る舞う二つの面が織り交ざった性格のイメージがある。黒桜とか言われてるけど、これはあくまで二面性の一部が強調されてるだけで二重人格じゃないと思うんだよな。
士郎と桜のベッドシーンの直後に言峰が「祝福しよう」って出てくるの最悪すぎて笑っちゃう
3.七日目(01:16:20~)
士郎と桜の気まずい表情を見て「こいつら、ヤッたな・・・」みたいな顔のイリヤ。
桜が遠坂を姉さんと呼ぶ優しい世界。長くは続かないが、長く続いてほしいよな。
「キシュア・ゼルレッチの置き土産に興味はないけど、魔法使いが残した宝箱は綺麗そうだから」のイリヤの言葉。遠坂の家にある、hollowで出てきた第二魔法を使った時空を越えてる例の箱のことなのかな。うろ覚えですけど。
間桐の家での魔術の修行、桜は「確かに、教えは厳しかったけど、厳しさでは先輩に敵わない」という桜。桜の受けた魔術の修行はあまりに厳しすぎて、バッドエンドで遠坂が受けた時はすぐ壊れちゃってたから相当のハードだと思うんですけど・・・
間桐邸で桜の部屋を荒らす慎二。慎二の持ってる薬は、魔力に反応して光る薬ですね。
原作では桜の人間としての機能がどんどん壊れていく過程が描かれていて見るに堪えないんですが、劇場版では料理の味がしないな。くらいになってますね。
個人的には、原作の「箸の持ち方を忘れて、それを悟られないようにしながらも懸命に箸を握りなおして、また箸を落として、それを何度も繰り返し、皆に気取られないようにしなくちゃと振る舞う。その姿に皆はとっくに気付いているのに、桜だけは気づいていない」の構図がめちゃくちゃ辛かった。
"くすくすと笑ってゴーゴー"
多くの視聴者の心を破壊したパート。明るい世界観が怖くて怖くて仕方がない。飴がグロテスク。ぬいぐるみの数が取り込んだサーヴァント、消えたサーヴァントの数と一致してるらしいです。
そして我らが英雄王が桜を討伐せんとやってきます。全てが自分のものであるギルガメッシュにとって、勝手に人を殺しては食ってる桜は目障りだったのでしょう。
原作では「貴様、よもやそこまで、ガ――――」とあまりにもあっけなく死んでいたギルガメッシュは(それも好きですが)、劇場版で「ああ・・・よもや、そこまで・・・」と感嘆したような死に方をしてますね。どっちもいいと思います。
ギルガメッシュという常人をはるかに超える質量をもつ魂を食べたことで消化不良を起こす桜。どちゃくそデカすぎてお腹壊しちゃった。
ギルガメッシュは自我が強度すぎて黒セイバーのように使役することも出来ないらしいので食べるしかなかったのだ。
4.八日目(01:29:42~)
桜の存在そのものが多くの人々の命を危険に晒しているという事実に士郎は気づきつつありますが、目を背けてしまう。事実を確信してしまうと、切嗣の願いを受け継いだ正義の味方であるならば、桜を殺すべきという結論に至ってしまうから。
桜も、自分が原因で士郎を苦しめていると悩んでいますが、ここで完全に蚊帳の外であったはずの藤ねえが正鵠を得てくる。
正義の味方であっても、えこひいきをして良いのだと。桜とイリヤの2人を救ってあげる藤ねえ、流石だ・・・
士郎の夢。士郎の中の正義の味方であろうとする自分が桜の首を落とす。かつての自分なら、正義の味方であるなら、桜を殺すべきだと告げる夢。士郎の横をアーチャーと切嗣が通り過ぎていくのは、なんなんでしょうかね・・・意図を掴みかねてる自分がある。
そして士郎を後押しする臓硯。桜を士郎に殺させたあと、自分がその身体を使うつもりだったのかなー。
5.九日目(01:39:35~)
イリヤと買い物に行く士郎。ローレライのシーンですが、曲は使われなかったのがちょい残念。
夕刻の士郎と桜の語らいで、春の櫻を見に行こう、と優しい約束。お互いに叶わないんじゃないかと思いながらも朗らかに夢を語る構図、いい・・・苦しいけど、いい・・・
凍らせた心で、温かな幻想をする。いつか冬が過ぎて、新しい春になったら、2人で、櫻を見に行こう――――
モノローグと共に包丁を手に桜の部屋に訪れる士郎。今までの自分を支えてきたものと、今の自分が本当に大事にしたいものとの葛藤。包丁を構え、持ち上げたまま、10分以上悩み、苦しんで、どうしても出来ず涙する。士郎が涙を流して泣くことってめちゃくちゃレア。
今までの正義の味方としての自分は壊れて、"レイン"での誓いがここで完全に形になった。
6.十日目(01:44:50~)
衛宮邸から1人離れて間桐の家に帰った桜。桜は今まで慎二の慰み者として使われていた過去がありますが、大切な人である士郎と触れ合ったことで、慎二に体を触れられることに強い嫌悪感を覚えます。そして、心の強い桜がついぞ願うことのなかった「こんな人、いなければいいのに」という暗い気持ちに反応して影が目覚める。
桜は心が頑丈でとにかく我慢強かったために、壊れないまま、闇を抱えたままここまで来てしまっていましたので、その抑圧してきた暗い感情が決壊してしまった・・・
桜の初めての自分の心から願った殺人のトリガーを引いたのが慎二なのは皮肉ですよね。
感情の赴くままに書き散らしました。
最終章、8/15公開です。