映画感想「Fate/stay night [Heaven's Feel] I. presage flower」★★★★★

 タイトル:「Fate/stay night [Heaven's Feel]」 I. presage flower

公開日:2017

監督:須藤友徳

主演:杉山紀彰(衛宮士郎)、下屋則子(間桐桜)

主な出演者:川澄綾子(セイバー)、植田佳奈(遠坂凛)、神谷浩史(間桐慎二)

120分

@鑑賞日:2020.08.08

@評価:★★★★★★★★★★・・・★★★★★(型月至上最高のアニメ化)

 劇場版Fate/stay nightの最終章公開に向けて映画を復習しましょう!

まずは第一章から。既に何度も見たのですが再履修ということで・・・

ゴリゴリにネタバレしていきます。

 

 

1.冒頭の過去編(00:00:00~)

Fateの定番、「あなたが私のマスターか」等は全部カット。原作のストーリー進行よりも、より分かりやすい構成に再構成されています。

最初は「一年半前 夏」から始まる。士郎がまだ弓道部に所属していたころ。士郎を見つめる慎二のカットが心なしか多め。

この時点から既にこの劇場版では慎二の心情にスポットがかなり当たっていることは間違いない。

弓道部に所属している士郎→バイトで腕をケガした士郎とそれを責める慎二→士郎をフォローするために家に通い始める桜

のキャラクター関係をサッと示せるいい構成だと思います。

士郎と藤ねえが諭しても桜は帰りません。桜は臓硯に士郎の監視を命じられたため、帰るわけにはいかなかったのでしょう。この時点では。

桜が衛宮家に通い出した後の士郎のモノローグが流れる中、セリフはありませんが士郎が弓道部を退部する描写があります。(夕暮れの中で慎二と会話しているところですね)

ケガも治った士郎の肩のヤケドを指して、冗談めかして「見苦しいね」などと言った慎二の言葉に対し、「そうだな、じゃあ部活を辞めよう」と答えてしまう士郎。慎二は当然そんなつもりはなかったのに・・・。

慎二が打ち込んでいて、大事にしているものであっても、士郎にとっては「体を鍛えられればそれでよかった」程度でしかない。置いていかれた慎二の表情と、家に帰ると迎えに来る桜とそれを迎える士郎の表情の明るさの対比がわかりやすい。

この時点から、「士郎と桜で過ごす衛宮家」と「一人になった慎二」の構図があるように見えますね。

 

桜が遠坂を想う時、桜は常に髪のリボンを触ります。原作ではなかった描写(だと思います)ですが、映像化するにあたり仕込んだ心情を表す仕草のひとつ。

 

土蔵で魔術の修業をする士郎。誰もいなかった一年半前の時と違い、扉の外から桜と藤ねえの声が聞こえるの、いいよね・・・。

 

2.聖杯戦争開始直前(00:12:40~)

士郎と桜の通学シーン。何気ない日常、感極まってしまうよね。桜にとっては至上の幸せ・・・。

学校で士郎、一成、慎二の会話。

原作やったときは、慎二に対して「なんて嫌なヤツなんだ」と思ったけど、慎二には慎二なりの事情があったことを数年後に理解したものでした。この映画から冒頭から慎二の描写をそこかしこに仕込んでいるので、「こいつにもいろいろあるんだよな」の気持ちを抱きやすい。

桜を遠坂が手伝っているシーン。士郎が遠坂を知っていることに表情を曇らせる桜。姉へのコンプレックスが凄い・・・。

 

「先輩はもう弓道部には戻らないんですか」

「そうだな・・・慎二が嫌がるんじゃないか」

「兄さん、きっと先輩が苦手なんです。けど、他の人よりずっと好きなんですよ。素直じゃない人だから、嫌いな人が好きなんです、兄さん」

なにげなくなされている会話ですが、桜は慎二のことしっかりわかってるな~と。

士郎が部活のことを言及すると慎二が機嫌悪くなるのは、弓道部に戻ってきてほしくないのではなく、慎二の一言だけであっさりと部活を辞めてしまったことが許せなかったんじゃないでしょうか・・・。

 

運命の夜の当日。部活もなく皆早く帰っている中で、イタズラを思いついた子供のように明るく振る舞い、「くだらない弓道部のくだらない後片付け」を士郎に頼む慎二。ですが、士郎の肩に手をかける際の表情は真摯そのもの。

そして士郎はいつものように快諾したのに対し、「あっそ。じゃあせいぜい、善人気取ってれば」と一気に不機嫌になる慎二。

思うに、慎二は士郎に断って欲しかったのでしょう。他の大勢と同じように頼まれごとを快諾するのではなく、「それはお前の仕事だ」とか(言葉はなんでもいいですが)言って欲しかったんじゃないでしょうか。

「くっだらない用事だけど、お前に頼んだら代わりにやってくれたりすんの?」という言い回しをすることで否定を期待したのかもしれません。頼み事を断らない士郎の、違う面を見たいという気持ち・・・こじらせてるな~

士郎は弓道場の掃除をしたのち、聖杯戦争に巻き込まれます。が、この映画ではランサーに刺されるところまででそれ以降はざっくりカット。オープニングと同時にダイジェストでセイバーを召喚。もうお前ら散々見たし別にいいだろ?という配慮、わかってる。

一方、桜は帰り道にギルガメッシュと出会い、原作通りなら「今のうちに死んでおけよ娘。馴染んでしまえば死ぬ事も出来なくなるぞ?」と声をかけられるシーン。

わざわざ忠告をしに来てあげるギルガメッシュの優しさが光る。

 

3.1日目 夜(00:30:00~)

言峰の教会へイリヤが訪問。そのままセイバーvsバーサーカー戦へ。サーヴァントの人を超越した戦いを前に自分の覚悟の甘さを知る士郎。そして自分を守るために誰かが戦うよりも自分が犠牲になることを選ぶのが彼らしさ。

バーサーカー戦からの帰り道でvsライダー戦もあります。この辺も原作とは異なる展開ですね。巻いた展開だけど違和感もありません。

この時、慎二は士郎がマスターであったことは嬉しくもあったんでしょうね。慎二は自分が特別であることに固執してますが、同時に士郎のことを認めてもいましたから、その士郎が自分と同じ土俵に上がってきたのは嬉しかったのでしょう。

ただ、士郎は間違いなくマスターですが、慎二はマスターではないので・・・"同じ土俵"というのは勘違いなんですよね・・・

セイバーに一蹴されるライダー。偽臣の書による低下したステータスではこうなるのも仕方ない。

そして臓硯が路地裏から現れ、「これで間桐は敗退じゃ」などと嘯く。なんて狸ジジイだ完全にウソじゃねえかこれ

士郎の「桜もこんなことをやらされているのか!?」に対し、「桜が魔術なんて知るもんか!」と答える慎二、結果的には桜が魔術師であることを士郎に隠しているのですが、おそらく彼はコンプレックスを刺激されたこと、「お前も桜、桜か!あんなやつ関係ない!」みたいな感覚で思わず否定したと見た。

誰も彼も慎二を見ていないことが何より気にくわないのでしょう。

 

4.二日目(00:52:30~)

慎二がマスターであったこと、桜を巻き込んでしまうかもしれないことを遠坂に相談する士郎。

「慎二には妹がいるんだ。桜って言うんだけど」

「・・・・・・・・・・・・その子が、どうしたの」

この、一拍あけることで遠坂が一旦出かかった言葉を飲み込んで別の言葉を発してる表現もいいですよね。

 

桜、「どうして私を家に泊めるんですか・・・?私が心配だからですか?」と聞くとき、心配だからだと当然わかっているんだろうが士郎の口からその言葉を聞きたくてあえて口にしたんだろうな。桜はそういうことする。

 

小次郎の体内からハサンが登場。小次郎はキャスターが小細工して召喚したアサシンであったから、臓硯は小次郎を触媒に使って本来のアサシンであるハサンを召喚した、みたいなことでしょうかね。

小次郎の異常に真っ先に気づいた葛木をハサンは瀕死に追い込む。さすがの葛木でも先手で首を斬りに来る暗殺者相手は厳しい。キャスターは小次郎のマスターであったため、小次郎から出てきたハサンにも契約関係(令呪が聞くとか?)があるみたいで、「私を解き放て、魔女」と命令。

ルールブレイカーで契約関係を切ったキャスターをハサンは一突き、念押しでもう一突きして殺害。息のある葛木も脳天にナイフ(ダーク)を刺して殺す。

キャスターの死骸は闇に吸い込まれていきます。

 

5.三日目(1:03:00~)

桜が士郎の家にいることを確認してから、士郎との共闘を持ち掛ける遠坂。遠坂はいいやつだ・・・

家に来た慎二、桜をビンタしたせいで士郎がブチ切れてるのにご機嫌がすこぶる良い。士郎が感情を露わにしてるの相手が自分である、ってのが気分いいんだろうな~

土蔵で修業してた士郎のもとに訪れる桜。2月に半袖の服を着てくるあたり、この時点から温度感覚変じゃないのか?勝負服が夏仕様のものしかなかったのかな・・・?

ストーブを挟んで過去を語らう。桜の大事な思い出、赤い夕焼けの中で走り高跳びを懸命に取り組む少年と、それを見ながら「失敗しちゃえ」と願った少女。

桜は気づいていなかったけど、高跳びを眺めていた少女は1人じゃなかったんですよね。高跳びを見ていた2人の少女はこの作品のヒロインになってたので、慎二も高跳びを見ていればな~あるいはがあったかもしれないのに・・・

私が悪い人になったら許せませんか、と聞く桜に対し、「ああ。桜が悪いことしたら怒る。誰よりも叱る」と答える士郎。許したうえで、一緒にいてくれるのだという優しい回答。

 

ランサーvsアサシン戦。この映画きっての素晴らしいバトルアクションが光る。ランサーの兄貴大好きなのでマジでムチャクチャにテンションがブチ上がる。

逃げるハサンと追うランサー。ランサーの陸上走りも話題になりましたが、個人的には投げたゲイボルクが自動で手元に返ってくるシーンも好き。ランサーの矢避けの加護により飛び道具が通じないランサーをハサンは柳洞寺の裏にある池まで誘います。

正確には影vsランサーvsハサンですが、影はハサンを狙わないので実質2対1。

影の支配下が強いこの地で清純な英霊であるランサーは影に絡めとられてしまいます。ルーンを使った守りもたやすく破壊されてしまう。影の相手をしているランサーのスキを突いたハサンの宝具展開。ザバーニーヤの演出もかっこいい。

ハサンはランサーの心臓を抜き取り食べること知恵を取り戻し、残ったランサーの死骸を影が捕食。

直後目覚める桜がお腹を押さえてるの、初めての食事だったからびっくりしたのかね。キャスターは臓硯が持ってっちゃったし多分そうだよね。

 

臓硯&キャスターvsセイバー&アーチャー

キャスターの死骸を蟲で操る臓硯に怒り心頭なセイバー。キャスターのルールブレイカーを見た士郎はその効果の危うさを感じ取って止める、のをアーチャーが担う。

キャスターの魔術が発動する前に、影がその場に登場。死骸であるはずのキャスターは本能的にその影を恐れたのか、魔術を放つも吸い取られる。

影を見た臓硯は「あり得ぬ・・・あり得ぬ・・・」と呟きながら消滅。

影はキャスターを飲み込んだあと、遠坂をピンポイントで攻撃。影くんはさあ・・・

アーチャーの「私怨を優先できる状況ではなくなったな」の呟き。士郎を殺すより凛を守ることに方向転換したんですかね。

 

6.四日目(01:31:10~)

衝撃のマーボー。ここ好き。

マーボーを見て前夜の影の瘧のイメージを思い出した士郎が吐きそうになる。このマーボー、なんかグロいよ、なあ泰山の店主。

 

セイバーと話す桜。「セイバーさん、私はあなたと先輩がなにをしているのか知りません」絶対知ってるわ~~~~~~~~~

でも、桜は士郎が戦いに赴くことは許せても、ケガをして帰ってくること、セイバーがいてケガをさせてしまうことが許せないんだろうな。桜は士郎を守りたがるからね・・・

 

柳洞寺に探索へ行く士郎とセイバー。

士郎を守ることが自分の使命。桜のためにも。と言うセイバー。士郎の日常に桜がいて、セイバーもそれを大事にしてるのが伝わる。

臓硯vs士郎 ハサンvsセイバー

ハサンは臓硯から距離を取るように戦っているので、士郎とセイバーを分断する作戦ですね。ハサンはランサーの心臓食ってからしっかりとした喋り方するようになってかっこいい。

柳洞寺に巣くう影によりセイバーは拘束され飲まれてしまう。士郎がもうちょい早く令呪でセイバーを呼んでいれば・・・!影に飲まれる前でも、拘束された時点で令呪による高速移動はできなさそうだなあ。

ライダーvsハサン

士郎の始末をハサンに任せた臓硯ですがライダーの登場により窮地を脱する。

セイバーと戦ったときより圧倒的に動きがいいライダーに違和感ある士郎。

ライダーさんの戦闘シーンはカメラアングルが舐めるように動く。カメラくんもよう見とる。

 

立体感のない影がヌッと現れてスッと消える。ホラー風の演出がいい味。

セイバーを失った士郎・・・失意の彼を、指がかじかむまで外でずっと待っていた桜。

士郎、自分の信念のために戦うことと、戦うたびに桜を心配させてしまうことでの悩みがあるような表情に見える。

「いったいさ、何をすれば、正義の味方になれるんだ―――」のモノローグで第一章エンディング。

エンディング曲『花の唄』の入りも最高。この曲、完全に桜の曲。

幸せな日常をくれたこと、自分を傷つけるものに怒ってくれたこと、あなたを傷つけるもの全てを許せない・・・完全に桜だ・・・。

 

劇場版Fate/stay night、第一章を見たときに得た確信は「これが終わるまで死ねない」でした。

12年前、初めてFate/stay nightをやったときの「これより素晴らしい物語との出会いは無い」という確信も揺るぐことなく時が過ぎたので、確信の気持ちを大事にしていきたい。

第三章、劇場公開、楽しみにしてます。